<不法滞在者>

スポンサードリンク

これは小説です。

「ねえ、シゲちゃん、うちの旦那ばヤッてくれんね。うまくいったなら保険金の半分はアンタにあげる。うちの奴は、近頃、不倫相手の女に入れ揚げて帰ってこないのよ。うちがこんな体になったらもう抱く気がしないとモロに言われたの。誰も好き好んでこんな体になったわけじゃないのにさ。片手だし家事も満足にできないのは分かっているけど悔しいじゃない。うちがアテつけに死ぬか。旦那を、殺してやりたい。1憶円の生命保険かけてるし。うまくいけば半分ははシゲちゃんのもんよ。私が手はずを整える。シゲちゃんが息の根を止めてよ。

「みかちゃん今日はどうしたんね。そんな、旦那をヤってくれとか刑事ドラマのような話ししてから。何かあったんね」

「うん、実はね、この前、義父の部屋に呼ばれて離れにいったの。そしたら義母さんの留守をよいことに、畳に押さえ付けられたの。この体でしょう。抵抗なんてできなくて。されるがままだっだったの、お義父さんが装具外すのに手間取っていたら、そこへお義母がさんが帰ってきたの。

お義父さんはみかさんが誘ったと言うし。私がすっかり悪者よ。結局触られたぐらいだったけど。それでも気持ち悪くて。血圧上がって再発するんじゃないかって気が気じゃなかったの。このことを旦那に言うと、なんもされてないならいいじゃないかと言うのよ。それに、不倫相手の向うの旦那さんにもバレてから、もう我が家は毎日が地獄の日々よ。家のを殺すか、私が死にたいわ」

「シゲちゃんと知り合ってからするようになったじゃない。するとね、旦那とじゃ濡れないのよ。女ってね、好きな相手じゃないとダメなの。だからシゲちゃんにも責任の一端はあるのよ。それに私たちの関係がバレないうちがいいのよ、ね、シゲちゃんも協力して」

スポンサードリンク

ヨッシャン

なるほど。みかの話を聞けば彼女が夫を殺したいほど憎む理由はわかった。そうかといって、実行する勇気がわかなかった。しかし、状況は逼迫している。2度目にみかを抱いている最中にあることを思いついた。

「よ~し、わかった。俺も体がこんな風では役に立たない。ヨッしゃんに話を持っていこうか」

その夜。ヨッしゃんを電話で呼び出した。

「ヨッしゃんヤバイけど金になる話がある。どうね。やる気はあるかい」

「シゲっちゃん、何でもする。金融の取り立てに追われて往生しよるけん。金になるなら何でもする」

事の次第を話して聞かせた。

「うーん、それはちょっと…」

「ほんなら止めとくか。俺にはできんけん、断るかな」

「シゲちゃん、それはちょっと待ってくれ考えがある。ペーさん(北川)ば一枚噛ませようか。ほら昔のマージャン仲間」

ペーさんというのはアジア系外国人だ。若いころ何度か麻雀をしたのでシゲも面識はある。故郷を出る時にブローカーにかなりの借金を負わされていた。中州のキャバクラの女にも入れあげていた。普段は佐賀の山の中のヤードが根城だ。周囲をガンガンで囲い、中で自動車の解体が行われている。

部品を発展途上国に売るのである。海外で日本の中古車は人気があるので中古部品の輸出は金になる。不法滞在の外国人が多く就労している。車の解体業というのは表向きで、本当は何をやっているかよくわからない。北の国や海外マフィアの蛇頭ともつながりがあるとも噂されている。実態がよくわからず警察も手を焼いているようだ。近所の防犯係のおっちゃんもため息をつく。

5000万の内2000万円づつを俺とペーさんでもらう。シゲちゃんが1000万円握る。これでどうね」

「俺は金はいらん。ペーさんに3000万やって仕事が終われば東南アジア辺りに逃がすとよか。バレてもペーさんを主犯にするたい。もし、お前に類が及んでも知らぬ存ぜぬで突っぱねろ。依頼者は紹介する。後は3人で決めてくれ。ただし、女に手は出すな。俺の名前は絶対に出したらイカン。ケーサツでしばかれて歌うとは極道者の恥ぞ」

あるタクシーの運転手が、違法薬物剤所持で捕まったことがある。誰から買ったかを追及され白状した。おかげで売人の遊び人はお縄になった。出所後タクシーの運転手を生け捕りにした。山中に連れて行き、二度と歌えんようにしてやると言って、運転手の口を木綿針で縫ってしまった事件がある。

「ほ、ほんとうか。わかった。そりゃあ良い考えじゃね。シゲちゃんもなかなか悪やのう」

「こくな。そげな肝の小さいことでどうするか。お前は国民保険もかけてない。歳とっても年金は出ない。今度の件で金を握ったら借金払って堅気になれ。美代子さんと二人で、ハウスクリーニングの仕事でも始めろ」

美代子というのは若いころ縫製工場の専務を脅かして失敗し、ヨっしゃんが竜神組に入るきっかけを作った女だ。若いころの腐れ縁で別れたりくっついたりを繰り返している。

それからのシゲは東京の人妻とネットラブに溺れた。幸子と言ってエリート商社マンの妻である。旦那はインドネシアに単身赴任している。時々ジャカルタから戻ってくる。シゲと幸子は羽田で落ち合い。鶯谷のラブホテルで情事を楽しんだ。山手線の鶯谷駅の北口から出て、線路沿いにあるクリスタルというラブホテルだ。幸子を抱いた後、何気にテレビをつけると、

「福岡県津屋崎の恋の浦の海辺で手足が切断された中年男性の変死体が砂の中から発見されました」

と報じられたのでシゲはみかの事を思い出した。あれからどれほどの時間が過ぎただろうか。もうすっかり忘れていたのだ。

あの時は半分冗談のつもりでヨっしゃんに話したのだ。まさか本当に彼らは実行したのだろうか。あれっきり彼は姿を見せない。ゆかからも何の連絡もない。男どもはどこか潜り込んでいるのだろうと思い込んでいた。シゲは無関係とも言えないので、いつ警察が事情を聞きに来るかとビクビクしながら暮らしている。

The following two tabs change content below.
まこっちゃん

まこっちゃん

元自動車会社工員、配管工、自動車洗車場、呉服担ぎ屋、土木作業員

昭和61年、琉球大学キャンパス内で架橋工事中に突然脳内出血に倒れる。
以降左半身不随の後遺症が残り1種2級の身体障碍者となる。

昭和64年(平成元年)リハビリセンターで入所中に知り合って交際していた女性職員と入籍。
福岡県粕屋郡古賀町(現古賀市)へ転居。彼女が働き、家事全般は夫がする暮らしを始める。生活費は折半。いわゆる「主夫」となって今に至る。

まこっちゃん

最新記事 by まこっちゃん (全て見る)

スポンサードリンク