脳卒中片麻痺で、全国水泳大会を目指すも挫折

スポンサードリンク

201104201512

「手は大きくゆっくりと、お腹の方に向かって水を掻け。手の平で水を掴んで後方に押しやれ。手の動きが早いと疲れて息が上がる。ゆっくり泳げ、そうすれば沈みはしない、右手で大きく乗り出ように水を掻け」

「健常者なら今のままでも良いが、右手と右足だけで泳ぐには、今日、練習した事を忘れるな」

片マヒ泳法への指導だ。

「それじゃあみんな、17日の九州大会は頑張ってくれ。俺も、出来るだけ行くようにするばってん、桃の熟れ具合によっては行かれんかもしれん」

平成24年6月10日、

シャークの練習が終わってから、最後の訓辞があった。泳いでいる人に沿って水中動作を観察し、熱心に指導してくれるМさんの言葉である。だが実際、水中に入り泳ぎ出すと、スッポリとこの教えが抜けてしまう。

速く泳ごうという意識が強すぎて、手の動きが速くなる。そうすると手のひらで水を切ってしまう、これがマズイ。

水を切ると推進力が失われる。手のひらで水を掴んで、後方に押しやって推力を得ないと前進できない。片手で泳ぐと、健側の右に寄ってしまい、直進が難しい。飛行機の片肺飛行と似ている。片方のエンジンが止まったら、もうひとつのエンジンで飛ぶわけだが、真っすぐ飛ばすにはそれなりの技術が必要だ。センターラインを見ながら泳いでいるが、麻痺側の感覚が無いから左に寄れない。どうしても健側の右寄りになってしまう。寄りすぎると、コースロープに手を取られ動きが止まる。息継ぎが出来ずに水を飲む。慌てるから手の動きが速くなり、水を切って推力を失う。溺れそうになるのを必死でこらえる。右寄りを修正しながら泳ぐので、その分遅くなる。実に無駄な動きが多い。わかってはいるが、容易では無い。

今年1月から福岡クローバーシャークという障害者スイミングに参加している。Мコーチと初めて会った時、指摘されたのは足を延ばして泳げという事であった。足が曲がっている事に自分では気づかなかった。自由形で泳いでいるつもりが、足はカエルのように動かしていた。しかし、右手は自由形というヘンテコリンな泳法である。足が曲がると水の抵抗が増す。足を延ばして足首をキックして推力を得るようにしろと指導された。しかし、やってみるとこれが実に難しい。

脳内出血で左半身不随、及び、体幹機能障害の後遺症がある。泳ごうとすれば、右手と右足を無意識でバタバタさせてしまう。最初は溺れまいと必死であった。25Мを泳いだら満足していた。速く泳ごうという気はなく、腰痛の改善になればと思って始めた。去年の4月19日からクロスパル古賀のプールに通い始めた。週4日、無料の巡回バスが出るのでこれを利用している。

スポンサードリンク

クロバーシャーク

半年ほどすると自己流で泳げるようになった。すると、欲が出て障害者の水泳大会に出てみたいと思うようになった。昨年末、スーパーでバッタリAさんに会った。Aさんは60代前半で、両手切断の障害者だ。近くに住んでいて、以前、水泳をしていると聞いた事がある。障害者の水泳競技会について尋ねた、

「クローバープラザの障害者スイミングに参加している。一度、練習を見学に来たらどうかな。しばらく練習に参加して、それから入会の判断をすればいいと思う」

年が明けて、1月14日の練習日に連れて行ってもらった。これが福岡クローバーシャークとの出会いである。それから練習に参加するようになり、4月から正式の会員となった。平日はクロスパル古賀、土曜日がクローバープラザで泳いでいる。

シャークの練習日は、毎週土曜日、福岡県総合福祉会館クローバープラザで、専用のコースを借り切って行われる。だいたい10名前後が集まる。最初はプールの中を2~3回歩く。それからS部長の挨拶があり、泳ぎの上級者から順々に泳いで行く。最初はゆっくり、25メートールを6本。次に速く、ゆっくりを、10本。トイレ休憩、それから25メート―ルを6本。ついで、速く、遅くを10本。50メートールを4本。だいたいこんな感じで順繰りに泳いでいく。障害の状態は人によって違う。遅い人が泳ぎ切るまで待っている。

顧問として、Мさんがみんなの指導に当たる。Мさんは76歳だがものすごく元気な人で、障害者の泳法に詳しい。材木の下敷きになって大怪我を負い、足が動かなくなった過去を持つ。予後のリハビリとして水泳を始め、元通りの体に戻ったという。これをきっかけに、福岡で障害者スイミングの会を立ち上げた。趣旨は障害者の健康維持と改善、そして人との交流。やがて、泳いでいるだけよりも、競技会に参加してモチベーションを上げようとの気運ができた。会の運営は、年会費を徴収して、出来るだけ他に頼らない。そんな流れの中で、福岡クローバーシャークが誕生したという。

片麻痺で泳ぐのは大変

片マヒで、歩いたり泳いだりするのは、大変難しい。片方の手足が麻痺していて、もう片方は正常に動くという、アンバランスな状態では手足を滑らかに交互に動かせない。歩く時も手を振れば歩きやすいが、片方の手を固定したまま歩くのはとても難しい。片方の手足を動かさないで、反対の手足を動かすのが実に難儀だ。しかし、たとえ動かなくても頭の中では普通に手足をバタバタさせる事を想像するだけでも泳ぎやすい。頭の中では両方の手足が交互に動いている。しかし実際は動かない。そういう事を考えると、こんがらがるので、頭で理解しようとせず、繰り返しの練習で、永い時間をかけて、体で覚えるしかないようだ。

速く泳ごうと必死になっていると、自然に体が回り、左の麻痺手がダラリと水中に下がって抵抗を増す。麻痺手を体にくっつけて泳げると良いのだが、それが出来ない。同じ片マヒで水泳の先輩であるHさんは、麻痺手を体にくっつけて泳ぐので、速い。僕より10歳も年上の71歳だが、吃驚するぐらい速い。麻痺手を海パンの中に入れたらどうかと提案された。そうすれば麻痺手が海パンで固定され、手が下がらなくて抵抗が減るというのだ。なるほど、これは良いと思って試した。しかし、体がローリングするので手が離れてしまう。麻痺手を体に縛って、水の抵抗を減らす人もいるという。競技会ともなると、そこまでするのかと驚いた。

初めての水泳大会に参加するので、クラス分けの審査を受けなければならない。障害の程度が人それぞれだから、細かく分けられているそうだ。地上での状態と水中動作の確認が行われ、障害者手帳の等級なども考慮して、総合的な判断が専門家により下される。同じクラスの人が水泳のタイムを競うのだと言う。まず、自分が、どのクラスになるのかを決めてもらわないと、全日本の競技会には出られない。初めての体験だから数日も前からドキドキして落ち着かない。

クラス分けの審査は、6月16日の午後2時から行われる。当日は、朝の7時30分発の飛行機で、福岡空港から開催地の宮崎空港へ向かう。17日が身体障害者九州水泳大会だ。とにかくこのクラス分けというのを受け、この大会で標準記録をクリアーしないと全国大会への出場はできないらしい。

最後に

クラス分けでは、自由形でS5の判定をもらった。(数値が小さいほど重度)このクラスの標準タイムは1分40秒である。全国大会に出るなら標準タイムをクリアーしなければならない。地方大会の九州大会に出擁して、50メートールを1分40秒以上のタイムで泳げないと出場資格はない。僕の場合は1分55秒ぐらいから成績が上がらず、全国大会出場は断念した。

マヒはどうしても手足の切断などの人に太刀打ちできない。大会に出るには費用もかかる。出場料の他に交通費と宿泊費がかかる。なのでクローバーシャークは退会した。今は古賀市がコナミに運営をいたくしているクロスパル古賀で水泳と水中歩行を頑張っている。毎年7月に開催される福岡県障碍者水泳大会へ参加している(この大会は障碍者ならだれでも出場できる)

The following two tabs change content below.
まこっちゃん

まこっちゃん

元自動車会社工員、配管工、自動車洗車場、呉服担ぎ屋、土木作業員

昭和61年、琉球大学キャンパス内で架橋工事中に突然脳内出血に倒れる。
以降左半身不随の後遺症が残り1種2級の身体障碍者となる。

昭和64年(平成元年)リハビリセンターで入所中に知り合って交際していた女性職員と入籍。
福岡県粕屋郡古賀町(現古賀市)へ転居。彼女が働き、家事全般は夫がする暮らしを始める。生活費は折半。いわゆる「主夫」となって今に至る。

まこっちゃん

最新記事 by まこっちゃん (全て見る)

スポンサードリンク