油断大敵

スポンサードリンク

急いては事をし損ずる。
色事というのは、はじめはそっと世間話程度からはじめるのがよい。しだいに相手のきづかぬままに心中に入り込み、頃合いをみはからって、はじめて腰を上げねばならぬ。
とかく男はことを急ぎ過ぎるとろくなことはない。

初老のその男は若いころケガをし、片方の腕をなくした。その後頑張って会社を勤め上げ悠々自適の暮らしをしていた。ある障碍者サークルに属していた。ある日、いんたーねっとで調べたと言って若い女が入会希望だと聞いて一同小躍りした。

年寄りばかりの集まりに若い女がどうして入りたいのか。女が言うには見た目は普通だが耳が聞こえない。がなんらかの手助けが必要なほど重たくはなく、役所も相手にしてくれない。親戚のおじさんの心配で勤めにでたがうまくいかずナマケていると誤解されて…
などと物語った。

「さもあろう、世間とはそうしたものよ」

その男はしたり顔で頷き、一同も大いに同調した。それから年寄りらは何くれとなく女の世話をした。食事をおごってやったり。月一回の集まりに片腕の男は車での送迎も申し出た。こうして次第に仲良くなってなってゆく。女は送迎の車の中で体をくねらせ、しなをつくって甘えるようなしぐさをみせた。

その男はつい、服の上から胸を触った。女は慣れたしぐさで手をふりほどいた。

数日後、女は豹変した。
「おじさん、アレはセクハラよ。市役所の人や、叔父さんの奥さんや子供さんに言ってもいいけど…」
と言い放った。

その男は真っ青になった。
「お、お金で、ネ…」
最初は20万円だったが次は40万円と次第にエスカレートした。
その男はたまりかねて警察に相談した。
「叔父さん、そういうことなら、すぐには引っ張れんで、あんまりしつこいようなら、またおいで」
色事は失敗のもとであるが、成就すればこれほど楽しいことない。が油断大敵。

The following two tabs change content below.
まこっちゃん

まこっちゃん

元自動車会社工員、配管工、自動車洗車場、呉服担ぎ屋、土木作業員

昭和61年、琉球大学キャンパス内で架橋工事中に突然脳内出血に倒れる。
以降左半身不随の後遺症が残り1種2級の身体障碍者となる。

昭和64年(平成元年)リハビリセンターで入所中に知り合って交際していた女性職員と入籍。
福岡県粕屋郡古賀町(現古賀市)へ転居。彼女が働き、家事全般は夫がする暮らしを始める。生活費は折半。いわゆる「主夫」となって今に至る。

スポンサードリンク