司馬遼太郎にはまるわけ

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200806281017

CS90は実に良く走る。OHC89CC8馬力のエンジンは回転の上がりもスムーズで時速100キロを軽く出した。シゲは農道を抜け、国道3号に出ると八女市後乃家の四つ角で愛車を止めた。
八女中央自動車学校と書かれた事務所のドアーを開けて入ると目の前の事務員に声をかけた。めがねをかけた丸い顔の女だ。

「すんまっしぇん。入学ばしたかとですけど」

「あ、そんなら、この書類に記入してください」

渡された申し込み用紙に下手な文字を書き並べると10分ほどで完成した。丸顔の事務員は書類を入念にチェックを始めた。

「どの時間帯にせらっしゃるとですか?」

「えーっと。午後からがよかです」

シゲがそういうと事務員は後ろにいる小柄な40年配の男のそばに寄っていって、

「小川先生、午後の部は何時からが空いてますか」

小川と呼ばれた小男は申し込み用紙を見ながら、

「あ、自動二輪ば持っとらっしゃあね。ほんなら。学科はいらんたい。午後4時からが空いとうばってんねえ」

「午後4時からでよかですか。よかなら明日から来てください」

「はい、お願いします」

「ほんなら。料金ば払うてください」

事務員に促されて全部で28000円を納めた。早くて続きを終えて退出しないと次の人が待っている。シゲは帰りしなに八女市本町の桐明書店に立ち寄った。ここへは中学生の頃から航空ファンや模型とラジオ、航空情報といった本を求めて良く来ていた。自動車学校の入学金を払ってもポケットには2千円が残っている。久しぶりに航空ファンでも買おうと思った。毎月21日が発売日なのだ。新刊が出ているはず。そう思った。いつもの棚を見ると確かに今月号が並んでいる。表紙はF4ファントムが飾っている。目次を見てパラパラッと斜め読みするが、ジェット機の写真ばかりである。第二次大戦のレシプロ機は扱いがほとんどなかった。特にお気に入りのソリッドモデル教室もF4Uコルセアーでは興味がわかない。買うのは止めて文庫の書架を眺めていると、国盗り物語という背文字が目についた。

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著者は司馬遼太郎とある

「ふーん、難しそうな名前ばい。ばってん。題が国盗り物語ちゃあ、面白そうな。とりあえず1巻ば買(こ)うてみようか」

当条のアジトに戻ったシゲは早速文庫を紐解いた。文章が平易で非常に読みやすいから物語がスラスラと頭の中に入ってくる。口語体なので中卒程度の学力でも読めた。これまで読んだ本は文章がやたら長いので、何が何だかさっぱりわからない。警察の調書もセンテンスが非常に長い。司法、行政、といった文章も難解でわかりにくく。一般人にはわざとわからないように作られているとしか思えない。
その点、この司馬遼太郎という人の本はとても読みやすい。一晩で1巻を読み終えてしまった。これいらい司馬作品を良く読むようになった。歴史関係の書籍など難解で面倒臭くて思えていたのが面白く感じられるようになってしまった。

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まこっちゃん

まこっちゃん

元自動車会社工員、配管工、自動車洗車場、呉服担ぎ屋、土木作業員

昭和61年、琉球大学キャンパス内で架橋工事中に突然脳内出血に倒れる。
以降左半身不随の後遺症が残り1種2級の身体障碍者となる。

昭和64年(平成元年)リハビリセンターで入所中に知り合って交際していた女性職員と入籍。
福岡県粕屋郡古賀町(現古賀市)へ転居。彼女が働き、家事全般は夫がする暮らしを始める。生活費は折半。いわゆる「主夫」となって今に至る。

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